
武満徹「キャロティンの祭典」
美しく官能的な作品を多く残した作曲家、武満徹。彼が病床にてスケッチしたレシピノート『キャロティンの祭典』から、そのタイトル曲ならぬタイトルレシピは「キャロット・サラダ」と「かぼちゃのマリネ」の二つのイタリアン・サラダ。他のレシピの多くに、朝、昼、夜と、楽譜を思わせる指示があるが、このサラダはいつでも良いのか時間の指示はなし。
愛嬌のあるタイトルは作品のタイトルを、美しいスケッチは旋律を、そして、調理法や野菜の選び方について書かれている細やかな指示が、“タケミツトーン”とよばれたオーケストレーションを思わせる。