ハン・テラ 伽耶琴コンサート -散調の響き-

日 時:2015年9月24日(木)19時開場 19時30分開演
会 場:杉並公会堂
チケット:イープラスチケットぴあミンファプラン
問合せ先:ミンファプラン
 
 
《概要》
伽耶琴という楽器は、朝鮮半島のとても古い楽器です。
「伽倻の琴」と書く通り、3世紀から6世紀頃まで朝鮮半島の南の方にあった
「伽耶国」嘉實王(カシル王)が、6世紀頃に于勒(ウロク)という楽師に
12弦の伽耶琴と12の曲を作らせたと言われています。

その後「伽耶国」は新羅(シラギ)に統合されますが、
そこで于勒(ウロク)と弟子たちは、伽耶琴を発展完成させました。

新羅の時代の土偶には、伽耶琴を演奏する姿が多数描かれていて、
そのことからも、音楽が盛んだったと考えられているようです。
日本にも奈良時代に「新羅琴(シラギゴト)」という名で伝えられていて、
正倉院に保存されています。

伽耶琴は、12本の絹の弦を張った琴ですが、
その演奏法は、日本の琴のように指にツメをつけて弾くのではなく、
直接、弦を弾いたり、つかみ離すなどして、演奏します。
左手の指では弦を押したり、引いたいり、
また「弄絃(ノンヒョン)」と呼ばれる、弦を揺らす独特の演奏法によって、
様々な音色を作り出します。

この「弄絃(ノンヒョン)」は、朝鮮半島で「恨(ハン)」と呼ばれる
深い悲しみの感情を表現するとも言われていて、
左手の奏法は伽耶琴にとって、命と言われています。

そして、今日演奏する「散調(サンジョ)」についてです。

「散調」は、巫俗(ムーダン)という朝鮮半島のシャーマニズムの儀式の器楽伴奏や、
「散調」と同じく19世紀に幅広く受け入れられた語り物の音楽
「パンソリ」を元に、19世紀末に器楽独奏曲として完成されました。

伽耶琴だけでなく、様々な楽器のための散調が作られています。

ゆっくりと始まり、徐々に激しい律動へと変化していく、
散調に共通する特徴は、まさにシャーマニズムの儀式のようです。

19世紀末ですから、伝統音楽といっても、比較的新しいと思われますが、
朝鮮半島の歴史、文化や暮らしのなかで歌われてきた旋律が、
名人たちの才能と技術によって、言葉のない、
純粋な器楽独奏曲へ昇華されたと言えるでしょう。

そして、そのようにして生まれた「散調」は、
師から弟子へと受け継がれていくようになりますが、
師から学んだものを、ただ繰り返すのではなく、
自分自身の音楽性を生かし、旋律を増やしたり削除したりして、
弟子たちはそれぞれの「散調」を構築していきました。

このようにして、現在、名人の名のついた「散調」が10ほどあるそうです。

今日演奏するのは「チェ・オクサム流」の散調です。
チェ・オクサムは、1905年に生まれ1956年に亡くなった伽耶琴名人で、
伽耶琴散調の創始者と言われるキム・チャンジョに師事しました。

その、チェ・オクサムによって、形成・発達した散調は、
弟子のハンドンジョンウォルという名人によって洗練され、
1980年には、重要無形文化財第23号に指定されるほどの曲となりました。

この演奏会は、その散調を、ハン・テラが演奏します。

ハン・テラは、6歳から伽耶琴をはじめ、国立国楽中学校と高等学校、
ソウル大学の国楽科で伽耶琴を学んだ、生まれながらの伽耶琴奏者です。
さらに、日本の東京芸術大学で日本の琴を、中国の中央音楽学院で、中国の琴、グーチェンを学び、
そして、現代音楽や、即興音楽など、新しい音楽活動にも積極的に取り組む、
将来をとても期待されている伽耶琴奏者です。

また「散調」は、独奏曲と言われますが、必ずチャンゴという打楽器の伴奏がつきます。
ほとんどの韓国音楽には打楽器の伴奏がつきますので、韓国の音楽では重要な役割をする楽器です。

今日は、そのチャンゴをチョ・スミンが演奏します。
チョ・スミンも、ハン・テラさんと同じく、
国立国楽中学・高等学校、そしてソウル大学で国楽を学んでいる、注目の若手演奏家です。

最近では、韓国でも演奏会用に短くした散調の演奏が多い中、
若い世代を代表する演奏者が「散調」の全曲演奏の演奏会を開催するということで、
とても挑戦的で注目されるべき演奏会です。是非、お越しください。
 
 
《演奏》
伽耶琴(カヤグム):韓泰來(ハン・テラ)
杖鼓(チャング):趙秀珉(チョ・スミン)
 
 
《韓 泰來 ハン・テラ について》
ハン・テラは、韓国の12弦の伝統弦楽器、伽倻琴(カヤグム)奏者。その華々しい経歴を紹介すると、5才で韓国伝統芸術界に入門し、カヤグムとパンソリ、舞踊などを修練。 9才からソロとして活動し始め、大韓民国ユネスコ表彰、韓国全国カヤグム競演大会大賞など、多数有数コンクールでの受賞と、数回にわたる国内外ソロリサイタルおよびオーケストラ共演。また、海外国際芸術祭などにも積極的に参加し、最も優れたカヤグム演奏者の中の一人として広く認められ将来を期待されている。国立国楽中学校・高等学校を卒業し、国立ソウル大学校音楽大学国楽科で学士と修士の学位を取得し、ソウル大学校音楽大学院で伽倻琴(カヤグム)を専攻。韓国国際文化交流センター名誉広報大使として、韓国文化と音楽を国際的に広げていくことに、多大な役割を果たし、韓国・アジア琴交流会、アジア音楽学会会員を歴任。

そんなハン・テラについて注目するのは、視野の広さと未来への活動だ。アジアの音楽に対する理解と音楽領域の拡大のために、日本の琴、中国のチェン、インドのシタールなどアジア伝統弦楽器について研究。日本の琴については東京芸術大学にて学び、中国のチェンについても中国に留学し学んでいる。

そしてなんといっても、伝統音楽にとどまらず、現代音楽や実験音楽にも積極的に挑戦しているのもすごい。
ニューヨークでは、ジョン・ゾーンと共演し、日本でもコンサートホールにとどまらない活動を展開するなど様々な演奏家と競演。2014年には、韓国で、現代音楽界で重要な作曲家である姜碩煕(カン・スキ)の依頼により、初期のグラフィカルなスコアによる作品『ニールマナカヤ』(1969)をカヤグムによって再演するなどしている。

《チェ・オクサム流伽倻琴散調》
散調は19世紀末に生まれた韓国民族器楽独奏曲で、伽耶琴散調はその中でも最も長い歴史を持つ。今回演奏するチェ・オクサム流伽倻琴散調は、1980年に重要無形文化財第23号に指定された名曲。チェ・オクサム(1905〜1956)がキム・チャンジョ(1865〜1920)に師事し、ハンドンジョンウォル(1917〜1994)に伝えた。
パンソリと南道風の律動的な響きを軸に、緻密な旋律が音楽の美しさを引き立たせ、緊張と緩やかさの対比が際立ち、陰と陽が対話するような流れと、静寂で深淵な世界がある。

伽倻琴演奏家ハン・テラは、8 つの伽倻琴散調流派の中でソン・グミョン、キム・ジュクパ、チェ・オクサム、ソ・ゴンチョルの4つの流派を学び、3 月にはソ・ゴンチョル(流)を韓国で披露。今回、これまで最も真剣に取り組んできたチェ・オクサム流伽耶琴散調の全曲を、伽耶琴演奏者の中ではじめて、日本、米国、韓国で巡回演奏を行い、伽耶琴散調の真髄を披露する。