バレエ・リュスの音楽

バレエ・リュス シエラザード
バレエ・リュスのプログラム
ディアギレフとストラヴィンスキー
ディアギレフとストラヴィンスキー

20世紀の音楽を切り拓いたバレエ・リュス

1909年にパリのシャトレ座で旗揚げ後、1929年に解散するまでの間、パリを中心に活動し20世紀初頭の芸術を牽引した、ロシアのバレエ団『バレエ・リュス』。そのバレエ音楽は、イーゴリ・ストラヴィンスキー、クロード・ドビュッシー、モーリス・ラヴェル、エリック・サティ等に委嘱し、20世紀初頭の音楽史に名を残す数々の作品を生み出した。

そのバレエ・リュスを率いたのは、ロシア出身のプロデューサー、セルゲイ・ディアギレフ(1872年3月31日 – 1929年8月19日)。ディアギレフ自身、リムスキー=コルサコフから作曲を学んだ音楽家であり、その審美眼とカリスマが、これだけ多くの名作を生み出すこととなった。

ディアギレフ率いるバレエ・リュスの委嘱によって作曲された作品には、イーゴリ・ストラヴィンスキーの『火の鳥』(1910)『ペトルーシュカ』(1911)『春の祭典』(1913)『プルチネルラ』、クロード・ドビュッシー『遊戯』(1913)、エリック・サティ『パラード』(1917)、モーリス・ラヴェル『ダフニスとクロエ』(1912)等、20世紀の名曲が目白押しである。

バレエ・リュスが生んだ名曲の数々

1910年 『火の鳥』 作曲:イーゴリ・ストラヴィンスキー

イーゴリ・ストラヴィンスキーの最初の代表作。後に3大バレエと言われるようになる1作目。ロシアの民話に基づく1幕2場のバレエ音楽。音楽はリムスキー=コルサコフに献呈された。セルゲイ・ディアギレフは、当時は、まだ28歳と若く無名の作曲家であるストラヴィンスキーに作曲を依頼することにした。このあたりもディアギレフのプロデューサーとしての才能をものがたっている。後に組曲として幾つかのバージョンが存在する。

1911年 『ペトルーシュカ』 作曲:イーゴリ・ストラヴィンスキー

イーゴリ・ストラヴィンスキー3大バレエの2作目。当時にしてアバンギャルドで斬新な響きとリズムは、2年後のウィーン公演でも「いかがわしい音楽」と言われたほど。そのような、斬新な音楽や振付、衣装に対する感覚もディアギレフの凄みか?

1912年 『ダフニスとクロエ』 作曲:モーリス・ラヴェル

モーリス・ラヴェルの代表作の一つとなっているこの作品は、ディアギレフの委嘱により作曲されたバレエ作品であるが、あまりバレエ的な作品ではないためディアギレフはあまり気に入らなかった。ラヴェル自身「舞踏交響曲」と形容しているように、リズムよりメロディー中心で、純粋な音楽作品として完成することを主眼に置いていたのかもしれない。

1913年 『遊戯』 作曲:クロード・ドビュッシー

「テニスをする3人の男女の恋の駆け引き」というテーマを考案した振付家ニジンスキーとディアギレフ。筋書きとおおまかな振付を決定した後、ドビュッシーに作曲を依頼したが、ドビュッシーには「馬鹿げており非音楽的」として断られてしまう。ニジンスキーがドビュッシーの音楽でなければ嫌だと駄々をこねたため、報酬を2倍の1万ドルに引き上げてドビュッシーに作曲を承諾させたと言うエピーソドのある本作。しかし、初演時のバレエの評価はあまり良くなかったが、楽曲については、後年、ピエール・ブーレーズ等によって、新しい楽曲構成法、時間認知、オーケストレーションを開拓したとして高く評価される。

1913年 『春の祭典』 作曲:イーゴリ・ストラヴィンスキー

バレエ・リュスの作品の中で最も重要な作品。架空の村で生贄の乙女が死に至るまで踊り続け神に捧げられるといった原始宗教的な官能と狂気に満ちた作品。ニジンスキーによる斬新な振り付けと、斬新で複雑な音響とリズムによる音楽によって、音楽が聴こえないほどの野次が飛び交うスキャンダルな初演となったことは有名なエピソード。冒頭のファゴットの旋律を聴いサン=サーンスは「楽器の使い方を知らない者の曲は聞きたくない」と言って席を立ち、劇場の支配人は、最後まで演奏させてくれと叫んだという。しかし、現在では、20世紀の最も優れた作品の一つとして歴史に刻まれ、この作品の書法やオーケストレーションは、様々な影響を与えている。

その他の主な作品

1917年 『パラード』 作曲:エリック・サティ
1919年 『三角帽子』 作曲:マヌエル・デ・ファリャ
1920年 『プルチネルラ』 作曲:イーゴリ・ストラヴィンスキー
1920年 『ナイチンゲールの歌』 作曲:イーゴリ・ストラヴィンスキー
1921年 『道化師』 作曲:セルゲイ・プロコフィエフ
1923年 『結婚』 作曲:イーゴリ・ストラヴィンスキー
1924年 『牝鹿』 作曲:フランシス・プーランク
1924年 『青列車』 作曲:ダリウス・ミヨー
1926年 『びっくり箱』 作曲:エリック・サティ
1927年 『エディプス王』 作曲:イーゴリ・ストラヴィンスキー
1927年 『メルキュール』 作曲:エリック・サティ
1928年 『ミューズを導くアポロ』 作曲:イーゴリ・ストラヴィンスキー
1929年 『放蕩息子』 作曲:セルゲイ・プロコフィエフ
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